ショートストーリー
明日への贈り物 Episode4
息子の涙で気づいた面前DV 心の傷を負わせる前にできること
いばらきの子どもと子育てファミリーへある家族の物語をご紹介します。
この物語が誰かの救いや気づき、そして児童虐待防止につながることを願って。
日常に起きる夫婦喧嘩でわが子を傷つけないために
産後の仕事復帰を果たした頃、私は飲み会で帰りの遅い夫とよく喧嘩をしていた。
「いい加減にしてよ」夜遅く帰宅した夫に思わず怒りをぶつける。「俺だって仕事なんだよ」「私だって働きながら子育てしてるじゃない」ヒートアップするうちに、いつものように互いが声を荒げる。たまらず夫が手を振り上げたとき、ハッとした顔になり、手を下ろした。振り返るとパジャマ姿の息子が瞳いっぱいに涙をためて立っていたのだ。
「パパ、ママ、ごめんなさい」震えながら、謝罪の言葉を口にする息子を見た瞬間、先輩ママから言われた言葉を思い出した。「子どもの前でのケンカは『面前DV』と言って、心理的虐待になるの。絶対にしちゃダメよ」
「ごめん、ごめんね」駆け寄り抱きしめると、息子は堰をきったように泣き出した。夫も背中から腕を回し、声を出さずに泣いていた。
後日、改めて調べると、面前DVによって苦しむ子ども達が多いという。それから夫と話し合い、二度と息子の前でケンカをしないと決めた。これからは私もあの先輩ママのように、意外と知られていない面前DVを周囲の人に伝えていきたいと思う。
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています