ショートストーリー
明日への贈り物 Episode10
育児のサポーターからママへ 理想にとらわれない、それぞれの子育てを
いばらきの子どもと子育てファミリーへある家族の物語をご紹介します。
この物語が誰かの救いや気づき、そして児童虐待防止につながることを願って。
ファミリーサポーターの活動で出会ったママが抱える悩み
ファミリーサポートという市のサービスを通して地域の子育てのサポートをしている私。
いつものように依頼者の家に向かうと、疲れ果てた様子のママと足元にしがみ付く男の子が出てきた。「すみません、収集に間に合わなくて……」玄関に積まれたゴミ袋を気にしてか、気まずそうに彼女が言い淀む。
その日ファミリーサポートを初めて利用したようで、預かったのは外遊びが大好きな2歳の男の子だった。
何回か預かりが続いた日に、「Sさん、私、子育てにイライラするんです」と彼女がぽつりと呟いた。聞くと、周囲の子育てと比較しての不安や男の子の行動への戸惑い、理想通りに育児ができない自身への不満が矢継ぎ早に出てきた。
「いいんですよ。お子さんがこうして元気に育っているのはママが頑張っている証拠だもの。大丈夫。大丈夫」そう言うと彼女はコクンと頷き、目は少し潤んでいるように見えた。
預かり始めた当初は暗かった彼女の顔も少しずつ明るくなり、時たまスーパーで会うと立ち話をするように。
ある日彼女はじっと私の目を見つめて言った。「私もSさんのように誰かを応援できる人になりたいな」照れを隠すのに大声で笑ってみた。
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています