ショートストーリー
明日への贈り物 Episode31
双子のMちゃんとAちゃん
いばらきの子どもと子育てファミリーへある家族の物語をご紹介します。
この物語が誰かの救いや気づき、そして児童虐待防止につながることを願って。
誰にも知られていない二人の姉妹 不安から目をそらした私の無力感
MちゃんとAちゃんは双子の女の子。見た感じは小学2・3年生くらいだろうか、公園で何度か見かけたことはあるが、近所の保護者の間でも二人をよく知る人はいなかった。
梅雨があけたある日、自転車に乗り始めた娘と近所の川沿いを散歩していると、Mちゃんたちが護岸の消波ブロックに飛び乗って遊んでいるのが見えた。周囲を見渡しても保護者らしき姿はない。心配になった私は川で遊ばないよう二人に声を掛けた。
「ここは危ないから遊んじゃ駄目だよ」
「お母さんにここで遊ぶのを伝えてあるの?」
「おウチは近く?何年生?」
変質者と思われないように、こちらも気を、遣う。でも、それより気になることがあった。
真夏だというのに、二人はお揃いの汚れたタートルネックのセーターにボロボロの短パン・サンダル姿で、何日も洗っていないのではと思うほどボサボサの髪。歯は虫歯で黒く変色していた。
結局、彼女たちの家がちょっと遠いらしいこと以外は何も話さず、その場を離れていった二人。私は強い違和感を感じながらも、それ以上は何もできなかった。
今でも時々、この場所を通ると、あの日のMちゃんとAちゃんを思い出して心が曇る。
二人の姿はあれから一度も見かけていない。
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています