ショートストーリー
明日への贈り物 Episode32
深夜に出会った小さな女の子
いばらきの子どもと子育てファミリーへある家族の物語をご紹介します。
この物語が誰かの救いや気づき、そして児童虐待防止につながることを願って。
幼児を保護した2人の中学生 安堵と、心に残るかすかな不安
夏も終わりに近づいたある日、夏期講習を終えて友達のリコと駅への道を歩いていると、ふと目の前にパジャマ姿で泣いている女の子が現れた。
幼稚園生ぐらいのまだ幼い子だ。時計は22時を差そうとしている。なぜこんな時間に?こんな場所で?驚いて隣を見るとリコも目を丸くしていた。
「ねえ、大丈夫?一人でいるの?」リコが話しかけるが、その子は「わからない」と泣きじゃくる。
「何でここにいるの?一緒に帰ろうか?」と続けると「ママにお外に出されちゃったの」とさらに泣いてしまった。
「私たちだけじゃ無理っぽいね。お巡りさん呼んでくる」リコはそう言って交番に向かってくれた。私はカバンに入っていた飴玉を渡し、二人で近くのベンチに腰を掛けた。
それから少し経ち、リコがお巡りさんを連れて戻ってきた。「君たちも」と促され一緒に交番まで付いて行くと、お母さんらしき人が不安な様子で待っていた。
「良かった!心配したんだから!」と駆け寄るお母さんに安堵する女の子。無事に戻れて良かった。それでも「お外に出されちゃったの」という言葉に感じた不安は、心の中にぽつんと残る。
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています